阿蘇グリーンストック専務理事コメント「九州の水を育む阿蘇の守り手基金」の開始に寄せて  

阿蘇グリーンストック専務理事 増井太樹 

阿蘇の草原は、千年の以上の間、人と自然が共に育んできた、かけがえのない場所です。水を蓄え、九州全域の暮らしを支えるこの草原は、自然の力だけでは維持できません。人の手が入り、火を入れ、草を刈り、放牧を続けることで、ようやくその姿を保ってきました。

科学的にも水源涵養機能が認められつつある阿蘇の草原ですが、その維持に汗を流す地域の方々や牧野組合への支援は、まだ十分とは言えません。現在も延べ約9300人の地元の皆さま、2300人近い野焼き支援ボランティアの方々が、草原の営みを支えてくださっています。そのおかげで、私たちは四季折々の美しい阿蘇に出会うことができています。

しかし、人口減少や高齢化の波は、特に小規模な牧野に深刻な影響を及ぼしています。「続けたいけれど、もう限界だ」という声が増え、野焼きを断念する牧野も少なくありません。このままでは、草原は静かに、そして確実に姿を消していきます。

そこで私たちは、「九州の水を育む阿蘇の守り手基金」を立ち上げました。この基金は、支援が届きづらかった牧野にこそ手を差し伸べ、地域の方々と寄付者の皆様が共に支えることで、草原の未来を守る仕組みです。人的支援と金銭的支援が合わさることで、阿蘇の草原が次の世代にも息づく世界を目指します。

本基金にいただく寄付は、阿蘇グリーンストックの事務費には充てず、最大限地元牧野組合に届けることを目指しています。寄付金の使途は熊本県や地元自治体等で構成される配分検討委員会で検討されますが、その中心には「草原のために汗を流す人」を支援するという思いがあってほしいと思います。

最後に、野焼き支援ボランティアや財団運営へのご支援も併せてご検討いただければ幸いです。多くの野焼き支援ボランティアの努力もまた、阿蘇の草原を守る力となっています。多様な支援の輪が広がることで、阿蘇の草原の再生と継承につながると考えています。

阿蘇グリーンストックは今後も、都市・農村・企業・行政が手を取り合い、地元牧野の皆さんと共に、阿蘇の草原という宝物を次世代に引きつぐ努力を重ねてまいります。引き続き、皆様のあたたかなご支援を心よりお願い申し上げます。

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