ステージI 提言2013

阿蘇千年の草原を次世代へつなごう

21世紀は自然共生社会に向かうと言われています。そのような中、千年を超える人と自然の共生の歴史を持ち、多様な美しさを見せる阿蘇の草原は、私たちに大きな恵みをもたらすとともに、豊かな心と大きな活力を与える、世界の宝と呼ぶにふさわしい場所です。

現在、存続の危機に立つ、この阿蘇の草原を将来に残していくため、阿蘇草原再生千年委員会は、平成22年10月に、草原の再生に取り組む阿蘇草原再生協議会の活動と、阿蘇の世界文化遺産登録に向けた取り組みを支援することを目的に、行政、経済界、学会、報道機関の代表が一堂に集い発足しました。その後3年足らずの間阿蘇の草原が有する価値や、課題を解決するための方策について熱心に議論してきました。

また、熊本をはじめ、九州全体に対して、阿蘇草原再生募金への協力の呼びかけを行ってきました。この取り組みの間に、東日本大震災、九州北部豪雨災害などの未曾有の大災害が発生するとともに、野焼き支援ボランティアの死亡事故など、あってはならない事故も発生しました。しかし、この募金の取り組みは、多くの賛同を頂けたことで一定の実を結び、6800万円以上(平成25年3月末見込み)の募金を集めることができました。この貴重な募金は、繁殖あか牛の増頭、樹林化した放棄地の草原再生、野焼き支援ボランティア活動の充実などに活用されることで、草原の再生に大きく貢献しました。さらに、阿蘇草原再生千年委員会での議論を契機に、熊本県では「阿蘇草原再生ビジョン」策定に向けた取り組みが進むとともに、熊本経済3団体による募金の開始にもつながるなど、阿蘇の草原再生は新たな一歩を踏み出しました。

その一方で、草原再生を支援する取り組みは、熊本県外への広がりが不十分であるのが現状です。また、草原を維持する牧野組合員などの高齢化や後継者の不足は確実にすすみ、草原の危機的な状況は更に進行しています。世界文化遺産登録に向けた取り組みも、これまで以上に加速していかなければなりません。

このような状況を踏まえ、この広大な阿蘇千年の草原を国民共有の宝として次の千年に引き継いでいくために、官民が連携して、次のとおり、阿蘇の草原再生に取り組む必要があることを広く国民に提言します。

一、人と自然の共生により千年の歴史を誇る阿蘇草原が、これ以上減少することに歯止めをかけるため、草原再生の基盤となる地域の産業の振興と担い手の育成を進めること。

一、観光や水などの阿蘇の草原の恵みを受ける広範な人々の理解と協力を得て、草原再生に向けた恒久的な財源の確保に努めること。

一、日本を代表する景観であり、九州の宝である阿蘇の「世界文化遺産」登録を早期に実現し、九州全体の観光振興を目指すこと。

以上

平成25年2月12日
阿蘇草原再生千年委員

委員長前熊本県立大学学長米澤 和彦
委員熊本放送社長浅山 弘康
九州経済同友会代表委員石原 進
熊本日日新聞社社長伊豆 英一
肥後銀行頭取甲斐 隆博
熊本県知事蒲島 郁夫
熊本市長幸山 政史
阿蘇草原再生協議会会長高橋 佳孝
生活協同組合連合会グリーンコープ連合会長田中 裕子
環境省九州地方環境事務所長塚本 瑞天
NHK熊本放送局長中島 靖夫
九州経済連合会会長松尾 新吾
農林水産省九州農政局長吉村 馨
事務局公益財団法人 阿蘇グリーンストック理事長佐藤 義興
(委員名50音順)